は?
「もっと言え!」で心ならずもJR東海を持ち上げてしまいましたが、気を取り直して「やっぱりJR東海は貨物鉄道と物流の敵だ!」という話をもう一つ。
JR東海の会長が葛西敬之氏であることは、鉄道に興味のある方ならだいたいご存知かと。
この葛西氏、いつだったかの講演で言ってしまったらしいです。
「日本に鉄道貨物輸送は不要だと思います」と。
は?何で?
私が見た範囲では、その理由までは書かれていませんでしたが、ホント何ででしょうね?
確かに、国内貨物輸送量における鉄道のシェアなんてトンベースで約1%、トンキロベースでも4%程度ですから、「数字だけ」見れば要らないと言えるかもしれません。
しかし、それでいいんでしょうかね?
例えば、論文でも触れましたが、長野県や群馬県、栃木県って、県内で民生用として消費される石油類の大半を鉄道で運んでるんですよ。
他にも化学薬品のように毒物・劇物に指定されている物も、内航海運が主流とは言え、鉄道もいっぱい運んでます。
で、仮に日本から鉄道貨物輸送が消えて、石油類・化学薬品といった危険物・毒劇物・高圧ガスが全部道路輸送にシフトしたとしましょう。
2008年度のJR貨物の輸送実績(速報値)を見ると、
・ 石 油 ・・・7,176千トン
・化学薬品・・・1,532千トン
・ 合 計 ・・・8,708千トン
これに「化学工業品」の2,038千トンも加えておきましょうかね。主に樹脂でしょうけど、危・毒・高に該当する物もあるでしょうから。
出ました。合計10,748千トン!
これを道路輸送しようとすると、積載13トンの緩和車で輸送するとして、単純に365日で割ると2,265台/日のタンクローリーあるいはトラックが必要になります。
ただ、小ロットの貨物も存在しますから、実際には3,000台/日くらいは必要かと。
年間45億トンの貨物を運んでいる道路輸送ですから、これくらい簡単に吸収できる。と思うでしょ?
ところがそうは問屋が卸さない。
道路においては危険物・毒物・劇物の輸送は経路に制限を受けます。面倒なので詳しい解説は省きますけど。
しかも、輸送効率向上のため1車当たりの積載量を増やすと、車両総重量の規制にも引っ掛かって走行可能経路がさらに絞られると。
他にも荷主やトラック事業者各社が自主的に設定した経路制限もあります。
分かりやすく言うと「危ない物を積んだトラックが、トンネルや住宅地、商店街、集落を貫く細い道を走るのは拙いでしょ?」ということです。
※そういう気遣いが全く無いのが、ダンプに乗ってる連中ですな。
が、彼らは貨物運送事業者ではない。だって白ナンバー(自家用車両)だもん。
それゆえ運行管理なんて考えがあろうはずも無く、センターラインが無い狭い
通学路にガンガン入ってきます。
もちろん、迂回経路があってもです。
そうなると、輸送経路は一般国道(酷道除く)や主要県道、高速道路に限られますな。
どうでしょう?現在、長野県は鉄道での輸送に8割を頼っていますから、首都高や中央道をタンクローリーがいっぱい走ることになりそうですね。
で、道路の方が事故率が高いですから、事故が増え、しかも積荷は危険物・・・想像したくもありません。
但し、私の経験から言うと、危・毒・高に該当する物品を輸送するタンクローリー事業者は、安全面の管理を厳格に行っていますので、単純に事故が増えるとは思えません。
あ、「管理を厳格に」を「締め付ける」という意味に取らないでください。
例を挙げると、「遵法運転でも遅れない運行ダイヤの設定」ということです。つまり、できる限りドライバーに無理をさせないということですね。
とはいえ、道路上では何が起こるか分かりませんので、やはり事故は増えてしまうのでしょう。
最近の統計でも道路渋滞による経済損失は年間12兆円、交通事故のそれは3兆円と言われています。
葛西氏は、これを「さらに増やそうよ」と仰っているわけですね。
で、国民に外部不経済を押し付けて、自分の会社は貨物列車の運転が無くなって線路保守費が減少して収支向上と。
それにしても、旅客と貨物の違いこそあれ、鉄道会社の会長としてはかなり思い切った発言ですな。
この「日本に鉄道貨物輸送は不要」という考え、非常に危険です。
新幹線の有無という違いがあるとはいえ、鉄道の輸送機関としての特性は旅客だろうが貨物だろうが変わりはありません。
つまり、「日本に鉄道貨物輸送は不要」ということは、先々「日本に鉄道旅客輸送は不要」ということにも成りかねません。
もちろん、貨物と旅客の流動には特性の違いがあるでしょうから、単純にそうとは言えませんけど。
でも、鉄道貨物輸送が不要となるよう、他の輸送機関のインフラや輸送機器・運用方法を整備するということは、旅客輸送についても鉄道が不要となる可能性を高めてしまうんじゃないかと思います。
↓最後に、国土交通省は貨物輸送分野において「鉄道は必要」と認識しているようです。どちらが常識的な考え方であるかは論を待たないと思うのですが・・・。
http://www.fujibuturyu.co.jp/headlines/090406/01.html
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